前回は、遺言は遺言者が死亡したときに効力が発生するものであることを紹介させていただきましたが、遺言の効力が発生すると、その全てをその遺言の内容どおりに実現させることができることになるかというと、そうでない場合があります。これは、相続人が有する遺留分を行使した場合です。
遺留分とは、遺言者による財産処分の自由と相続人の相続権保護のバランスをとるための制度と言えます。
遺言者が死亡して相続が開始した場合、相続人が相続したであろう財産を、遺言や生前の贈与などによって処分してしまった場合、相続人はその相続権を行使することができなくなることがあります。このような場合に、相続人の最低限の権利を保護する制度が遺留分制度です。
例えば、被相続人Aに妻B、長男C、長女Dがいる場合に、Aが遺言によってその財産の全てを相続人ではないXさんに遺贈してしまった場合、Bさん、CさんおよびDさんは、相続人であるにもかかわらず、Aさんの財産を全く相続できないことになってしまいます。このような場合に、B・C・Dは法律で定められた遺留分を行使することによって、最低限の財産を承継することができます。
この遺留分は、相続財産に対する一定の割合が法律で定められています。具体的には、直系尊属のみが相続人である場合、つまり被相続人(亡くなった人)の父母、祖父母が相続人である場合は相続財産の3分の1が、その他の場合は相続財産の2分の1が遺留分として保護されます。前例の場合では、Aの遺産の2分の1をB・C・Dがそれぞれその相続分に従った割合の遺留分を主張することができるということになります。
遺言を作成するときに、この遺留分を考慮しておくほうが望ましいと思われますので、次号も、もう少し遺留分について解説させていただきたいと思います。
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