遺言の取り消し(撤回) - 西川欽一「遺言と相続のお話」

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

これまで遺言書の要件などについてご紹介してまいりましたが、今回は、遺言の取り消し(撤回)について解説させていただきます。

ずいぶん以前にはなりますが、「毎年、正月になると遺言書を書き換えるんだ。」と言っていた方がおられましたが、遺言の内容の一部や全部を取り消したり、変更したりすることは、遺言者が自由に行うことができます。例えば、「A不動産を長男Xに相続させる。」という遺言書を作成したが、その後、その長男が親の面倒見が悪くなったので、このA不動産を二男Yに相続させるように変更したいような場合です。

 

このように遺言の一部または全部を取り消すことを「遺言の撤回」といいます。自筆証書遺言でも公正証書遺言でも遺言の撤回は可能です。

 

遺言の撤回の方法はいくつかありますが、その一つとして、先に紹介した方のように、遺言書自体を書き直してしまう方法があります。この場合、以前に作成した遺言と抵触する部分についてのみ、以前の遺言を撤回して新たな遺言をしたものとされます。このとき、新しい遺言かどうかは遺言書に記載された日付によって判断されます。ただし、この方法は、「A不動産を長男Xに相続させる。」という遺言を先に作成していたところ、後に作成した遺言で「A不動産を二男Yに相続させる。」というように抵触するかどうかが明らかな場合は問題ないのですが、抵触するかどうかがあいまいな場合は紛争のもとになる可能性があります。したがって、新たに作成する遺言で、一部を撤回する場合は、「平成○年○月○日作成の遺言の第○項を取り消します(撤回します)。」または、全部を撤回する場合は「平成○年○月○日作成の遺言の全部を取り消します(撤回します)。」というように撤回する旨を明らかにするよう記載しておくことが望ましいといえます。

 

また、公正証書遺言を撤回する場合でも公正証書遺言でする必要はなく、自筆証書遺言によって、先の公正証書遺言を撤回することも可能です。

 

その他、遺言の撤回の方法としては、遺言者自身によって故意に遺言書自体を破棄してしまう方法や、遺言の内容となっている目的物を遺言者自身によって故意に破棄する方法があります。

 

我々リーガルワークスは、遺言の作成や撤回、変更などのご相談に対して、多くの経験からアドバイスをさせていただけます。また、遺言者との綿密な打合せのもとで、遺言に関連するあらゆる手続きをすべて円滑に遂行するため、ワンストップサービスによるお手伝いさせていただいております。

 

行政書士 西川欽一