公正証書遺言(その1) - 西川欽一「遺言と相続のお話」

前号まで「自筆証書遺言」について紹介してまいりましたが、今回からは、公正証書遺言について紹介いたします。

これまで紹介させていただきました自筆証書遺言は、その方式としては最も簡易なもので、誰にでもすぐ利用しやすい方式の遺言といえます。しかし、作成や訂正がしやすい反面、変造や隠蔽、破棄などもしやすいという危険もあります。これに対し、これから紹介させていただく「公正証書遺言」は、法務局所属の公証人によって証書にするという方式の遺言で、原本は公証人役場に保管されますので、偽造、変造の危険は最も少ない方式といえます。

 

公正証書遺言の要件として民法は、(1)証人2人以上の立会があること、(2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること、(3)公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること、(4)遺言者及び証人が、その筆記が正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと、(5)公証人が前記(1)~(4)の方式に従って作成したものであることを付記して署名し、印を押すこと、の五つを挙げています。

 

これらの要件を具備した公正証書によって作成された遺言書を公正証書遺言といいます。実際に公正証書遺言を作成するためには、事前に戸籍や固定資産評価証明書、登記事項証明書等の書類を公証人に提出し、遺言内容についての公証人との打合せやスケジュール調整を行ったうえで、公証人役場に赴いて作成するか又は公証人に出張してきてもらって作成することが必要です。このように、公正証書遺言を作成するためには準備に要する時間が必要で、また、公証人の手数料の費用等、コストもかかるというデメリットもあります。しかし、この反面、証人を立会わせたうえで公証人によって作成されるため、誤記や遺言の内容について無効とされることが少なく、前述のように偽造、変造、隠蔽や破棄の危険を回避でき、検認手続が不要である等といったいくつかのメリットもあります。

 

次号からは、前述した公正証書遺言の要件について、もう少し詳しく説明させていただきたいと思います。

 

我々リーガルワークスは、遺言書の文案作成や自筆証書・公正証書遺言の作成のサポート、その他相続対策、相続手続に関連するあらゆる手続きをすべて円滑に遂行するため、ワンストップサービスによるお手伝いさせていただいております。まずは、お気軽にご相談ください。

 

行政書士 西川欽一