遺産分割の協議 - 西川欽一「遺言と相続のお話」

遺産は、相続発生、すなわち被相続人の死亡と同時にその全てが法定相続分に応じた共有の状態となります。つまり、被相続人が所有していた土地、建物の不動産も自動車や時計などの動産もすべて相続人全員の共有の状態となります。この共有状態を解消し、それぞれの財産の帰属を定める手続が遺産分割です。そして、遺産分割が行われると、遺産は、遺産ではなくなり、相続人の固有の財産又は権利となります。

 

この遺産分割は、被相続人が遺言により、その分割方法を定めておくか、又は分割方法を第三者に委託することもできますが、この遺言による方法は、後日、遺言のときにご紹介することとさせていただいて、ここでは、協議による分割についてご紹介致します。

 

遺産分割の協議は、協議に参加すべき人全員の合意によって成立します。したがって、協議に参加する人のうち一人でも、その分割方法に反対する人がいれば協議は成立しませんし、協議に参加するべき人が協議に参加しないときも成立しないことになります。

 

しかし、その協議の方法に制限はありません。したがって、相続人全員が一堂に会して協議を行っても、持ち回りで行っても、誰かが提示した原案に同意する方法でもこれを行うことができます。たとえば、相続人の一人が海外に住んでいるようなときに、協議をするためにわざわざ帰国しなくても、電話やメールでやり取りした後、同意した内容の協議書を作成して海外にいる相続人のもとへ送付し、署名していただくという方法によることも珍しくありません。

 

遺産の分割に際しては、その各遺産の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況、その他一切の事情を考慮して行うものと民法で定められていますが、法律で定められるまでもなく、多くの場合が、これらの事情を考慮して平和裏に協議が成立しているものと見受けられます。

 

しかし、いくら話し合っても協議が成立しない。あるいは、協議に応じようとしない相続人がいる。などといった問題も少なからず現実に起こっています。このような場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。

 

遺産分割調停とは、簡単に言うと家庭裁判所の調停委員によってすすめられる協議のようなものです。この調停が整う(「調停成立」といいます。)と、遺産分割協議が成立しますが、整わない場合(「不調」といいます。)は、家庭裁判所による審判による分割が行われることになります。

 

我々リーガルワークスは、協議が成立した場合の遺産分割協議書の作成はもちろん、遺産分割の協議が成立しないような場合、何がその協議の成立を妨げる要因になっているのかを考え、解決策を提案するかたちで皆様方のお手伝いをさせていただいております。

 

行政書士 西川欽一