リーガルワークス合同事務所

16

2月

2009

個人情報保護のツボ 〜流出の当事者とならないための最低限の義務〜 - 関戸幸一「コンプライアンスの部屋」

この1ヶ月の間に大きな個人情報流出事件が2つありました。いずれの流出も同じ原因によるものです。これを受けて、今回は「流出の当事者とならないための最低限の義務」と題して緊急的な記事をお送りします。

ファイル共有ソフトの危険性

個人情報流出の例として前回の記事で次のように紹介しました。

 

また近年の情報化社会を反映してこんな例もあります。使用しているパソコンが何らかの原因によってウイルスに感染し、そのパソコンに保存されているデータすべてが本人の知らぬ間にインターネットへ公開される状態になってしまったという例です。

 

まさにこの原因によって個人情報が流出するという大きな事件が続けて起きました。1つは、平成18年度に神奈川県の県立高校に在籍していた生徒延べ約11万人分に関する口座情報等を含む個人情報が流出したという事件です。日本IBMが神奈川県教育委員会から受託していたシステム開発について、業務委託先社員が所有していたパソコンが流出源となったものです。このパソコンはファイル共有ソフトWinnyが導入されており、かつ暴露ウイルスと呼ばれるウイルスに感染していました。流出した個人情報の件数が極めて多かったため、委託先企業や流出源の個人はもとより、日本IBMという委託元企業の信頼やブランドが大きく傷つくことになりました。

 

2つは、独立行政法人の職員の私物パソコンから 個人情報が流出したという事件です。このパソコンにもファイル共有ソフトが導入されており、かつウイルスに感染していました。ウイルスに感染していたことにより、以前の勤務先の顧客約10社の業務関連個人データが流出しました。さらに、より深刻なこととして、この職員がファイル共有ソフトを通じて商用の日本語入力ソフトウェアや児童ポルノ等の猥褻画像を入手していたことが「暴露」されました。この職員は今後、仕事においても私生活においても厳しい人生を送らなければならなくなるでしょう。

 

加えて問題とされたのは、この職員の所属先である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、その主要業務に情報セキュリティを掲げていた点です。IPAはウェブサイトに「Winnyによる情報漏えいを防止するために」というページを作っており、「Winny 緊急相談窓口(Winny119番)」まで用意していました。この事件によりIPAはその業務や職員のあり方が厳しい目で見られることになると思われます。

Winnyの使用をやめること

これらの事例から学ぶべき教訓は何か。結論からいうとWinnyの使用をやめるということに尽きます。これをお読みのあなたがWinnyを使用しているのなら、直ちにその使用をやめましょう。「Share」などのファイル共有ソフトも同様です。今は使用していなくても以前使用していたことがあるという場合、そのままにしておくのは危険です。Winny検出ソフトを利用するなどして、Winny関連データを直ちにパソコンから削除すべきです。Winny検出ソフトはセキュリティソフト業者などが提供しており、無償のものもあります。

 

Winnyなどのファイル共有ソフトに対しては著作権侵害を助長するという批判がありました。Winnyの作者が著作権法違反幇助の罪で起訴され、現在も裁判が係属中であることはご存知の方も多いでしょう。そこからの連想で、Winnyを使用することについて倫理面から問題にするという考えは多くの人の意識の奥にあったように思います。その考えは共感できるものですが、ことは著作権だけの問題ではありません。上記の例から明らかなように、Winnyはそれ を使用するだけで個人および組織に対して深刻な打撃を与えうるものということができます。

 

行政書士 関戸幸一